確定拠出年金や積立投資をしている人なら必ずと言っていいほど利用しているドルコスト平均法。ドルコスト平均法の特徴や結果的については以前に『ドルコスト平均法とは?本当に効果があるのか?データを使って検証してみた』という記事で検証をしました。
僕の出した結論は自分の投資手腕に自信のある人以外にはドルコスト平均法はオススメできるでした。
だから、『ドルコスト平均法は機会損失が〜』とか言って文句ばっかり言う人は、ご自慢の投資手腕でマーケットでバリバリ戦ってきてくださいって感じです。
この記事では、そうではないドルコスト平均法を利用している人に向けてドルコスト平均法をさらに活用するための応用方法をお伝えします。
先に結論から言うとドルコスト平均法は高ボラティリティな資産で運用する方が圧倒的に有利だということです。
ボラティリティって言葉がわからない人も安心してください。ちゃんと説明します。ただドルコスト平均法の基本を理解できていない人には少し難しいと思うので、読んでいてわからなくなったら、さっき紹介した『ドルコスト平均法とは?本当に効果があるのか?データを使って検証してみた』という記事を先に読んでくださいね。
- ドルコスト平均法を最大限活用する方法がわかる
- 実在する投資信託を使ってドルコスト平均法を検証した結果がわかる
- 普通に投資した場合とドルコスト平均法で投資した時にリターンの違いがわかる
- ドルコスト平均法を使っている人がとるべき効率的な行動がわかる
目次
ドルコスト平均法はブレ幅が大きい方が有利
ドルコスト平均法について簡単におさらいしておきましょう。ドルコスト平均法の特徴は以下の通りです。
- 決まったサイクルで決まった金額を購入する
- 安い時に多く買い高い時に少なく買う
- 万能ではなく一括投資の方がいい結果となる場合もある
- 上昇し続ける相場には弱い
ドルコスト平均法は上記で書いた通り、上昇し続ける相場に弱いです。さらに言うと安い時に多く買い高い時に少なく買うので上下に動き続ける相場に強いという特性があります。
つまり、値動きの小さい商品でドルコスト平均法を行うより値動きの大きい商品でドルコスト平均法を行う方がより効果的だということです。
少し極端な例で説明しましょう。 AとBという投資信託があり、共に始まりの値段は1万円でした。Aは値動きがあまりないのに対し、Bは値動きがものすごく激しい投資信託でした。どちらにも毎月購入1万円で投資した場合、どちらの方が良い結果になるでしょうか?
投資した場合の比較表を見てみましょう。共に購入したのは毎月10000円なので、投資信託の値段とそれぞれの購入口数を載せています。
投資信託Aの値段 | Aの購入口数 | 投資信託Bの値段 | Bの購入口数 | |
1月 | 10000 | 1.00 | 10000 | 1.00 |
2月 | 9500 | 1.05 | 6000 | 1.67 |
3月 | 10000 | 1.00 | 12000 | 0.83 |
4月 | 10500 | 0.95 | 18000 | 0.56 |
5月 | 10000 | 1.00 | 12000 | 0.83 |
6月 | 9500 | 1.05 | 6000 | 1.67 |
7月 | 10000 | 1.00 | 2000 | 5.00 |
8月 | 10500 | 0.95 | 6000 | 1.67 |
9月 | 9500 | 1.05 | 12000 | 0.83 |
10月 | 10000 | 1.00 | 18000 | 0.56 |
11月 | 10500 | 0.95 | 12000 | 0.83 |
12月 | 10000 | 1.00 | 10000 | 1.00 |
合計口数 | 12.02 | 16.44 |
この表を見ればわかる通り、Aは値動きが小さく12口購入してもトータル購入口数は12口ちょっとですが、値動きの激しいBの方はトータル購入口数は16口と多くなっています。
このように値動きの小さい投資信託ではドルコスト平均法のメリットを最大限活用できないという結果になります。
さらに踏み込んで実在する投資信託のデータを利用して、値動きの激しい資産と値動きの小さい資産でどのように結果が異なるのかを検証してみましょう。
ボラティリティとは?
ちなみに最初の方に出てきたボラティリティという言葉ですが、値動きの激しい(ブレ幅が大きい)ことをボラティリティが高いといい、値動きの小さい(ブレ幅が小さい)ことをボラティリティが低いと言います。
例えば平均リターン3%の投資信託が2つあったとしましょう。
この2つは平均リターンだけをみれば同じですが、中身を見ると全然違う商品だということがわかります。
下の表を見てください。
投資信託Aの値段 | 投資信託Bの値段 | |
1月 | 10000 | 10000 |
2月 | 8000 | 6000 |
3月 | 9500 | 5000 |
4月 | 10500 | 18000 |
5月 | 11000 | 12000 |
6月 | 11500 | 6000 |
7月 | 11700 | 10000 |
8月 | 12000 | 7000 |
9月 | 12000 | 12000 |
10月 | 11500 | 12000 |
11月 | 11000 | 20000 |
12月 | 10000 | 10000 |
平均リターン | 7% | 7% |
このようにAはバラつきがあまりないのに対し、Bはバラつきが激しいです。でも平均リターンは一緒です。このように平均リターンとは表面しか見せない数字です。このように中身を見ればAはボラティリティが低く、Bはボラティリティが高いということがわかります。
まぁ僕からしたら、ボラティリティって言わんと値動きが激しいって普通に言えや!って思うんですが、金融関係の人は横文字が大好きなようで必ずと言っていいほどボラティリティと言います笑
雑誌やテレビ、金融系の話では”高ボラティリティ資産が〜”とか普通に言うので覚えていて損はしないので頭の片隅に置いていてください。
実際に投資結果を比較してみよう
では、実際に比較してみましょう。さっきABの投資信託のように平均リターンは同じくらいでもボラティリティが違えば、結果がどう変わるのかを比較します。
モーニングスターから10年平均利回りの近い2つの商品をピックアップし、それらを毎月一定額ずつ投資する、つまりドルコスト平均法で投資した場合、どのような結果になるのかを見てみましょう。
今回ピックアップしたのは、『三井住友・日経225オープン』と『三井住友・DC年金バランス30(債券重点型)』です。
これらは投資している対象の資産が全く違いますが、10年間のリターンが近いということでピックアップしました。
条件は以下の通りです。
- 毎月1万円を購入
- 投資期間は2007年6月〜2017年6月の10年間
まずは、それぞれの投資信託が10年間でどんな値動きをしていたか確認しましょう。
三井住友・日経225オープンの値動きをチェック
三井住友・日経225オープンのチャートを見てもらうとわかるとおり、過去10年のうち2008年あたりのリーマンショックで大きく値段が下がっています。これは株式のみに投資をした結果で、株式に投資すると過去のデータを見るとおおよそ60%ほど下落しています。
投資開始時の2007年6月時点の値段は10201円、投資終了時の2017年6月時点の値段は13646円となり利益は3445円、単純に投資した場合は年率2.81%となります。
開始時 | 10201円 |
終了時 | 13646円 |
利益 | 3445円 |
リターン | 34% |
年間利回り | 2.81% |
三井住友・DC年金バランス30(債券重点型)の値動きをチェック
さきほどの『三井住友・日経225オープン』のチャートと比較すると上下の幅が小さいのに気づくと思います。この投資信託は株式や債券を組み合わせています。その名の通り、債券を中心に組み合わせています。
債券を中心に組み合わせているのでリーマンショックの時もそれほどダメージがありません。債券は株式に比べてローリスクローリターンだからですね。でも、ローリターンだから上昇時も緩やかです。
投資開始時の2007年6月時点の値段は10201円、投資終了時の2017年6月時点の値段は13646円となり利益は3445円、単純に投資した場合は年率2.81%となります。
開始時 | 10994円 |
終了時 | 14191円 |
利益 | 3197円 |
リターン | 29% |
年間利回り | 2.42% |
ドルコスト平均法で投資すれば結果も変わる!!
今2つの投資信託を見てもらいましたが、投資開始から終わりまで普通に投資をしていれば、2つの投資信託のリターンの差は0.4%くらいしかありません。
三井住友・ 日経225オープン |
三井住友・ DC年金バランス30 |
それぞれの差 | |
開始時 | 10201円 | 10994円 | |
終了時 | 13646円 | 14191円 | |
利益 | 3445円 | 3197円 | 248円 |
リターン | 34% | 29% | 4.69% |
年間利回り | 2.81% | 2.42% | 0.39% |
しかし、ドルコスト平均法で投資をした場合、どれだけのリターンの差が生まれるのかを今から見てもらいます。
三井住友・日経225オープンにドルコスト平均法で投資したら・・・?
まず、この投資信託を毎月1万円ずつ購入した場合です。こんな感じです。
日付 | 基準価額 | 購入口数 |
2007/7/31 | 10201 | 0.98 |
2007/8/31 | 9800 | 1.02 |
2007/9/28 | 9968 | 1.00 |
・ ・ ・ |
・ ・ ・ |
・ ・ ・ |
2017/4/28 | 13061 | 0.77 |
2017/5/31 | 13372 | 0.75 |
2017/6/30 | 13646 | 0.73 |
このように買った場合、合計の購入口数や年間利回りは以下のようになります。
合計口数 | 155.71 |
売却価格 | 2,124,795円 |
元本 | 1,200,000円 |
年間利回り | 6.42% |
この投資信託を単純に購入した場合の年間利回りは2.81%だったのに対し、ドルコスト平均法で購入した場合は6.42%まで利回りが上昇します。
これは何度も言っている通り、ドルコスト平均法はボラティリティの高い商品の方がメリットをより受けることができるからです。
ではボラティリティの低い投資信託の場合はどうなるのかチェックしましょう。
三井住友・DC年金バランス30(債券重点型)にドルコスト平均法で投資したら・・・?
まず、この投資信託を毎月1万円ずつ購入した場合です。こんな感じです。
日付 | 基準価額 | 購入口数 |
2007/7/31 | 10994 | 0.91 |
2007/8/31 | 10878 | 0.92 |
2007/9/28 | 10982 | 0.91 |
・ ・ ・ |
・ ・ ・ |
・ ・ ・ |
2017/4/28 | 13994 | 0.71 |
2017/5/31 | 14086 | 0.71 |
2017/6/30 | 14191 | 0.70 |
このように買った場合、合計の購入口数や年間利回りは以下のようになります。
合計口数 | 108.87 |
売却価格 | 1,544,951円 |
元本 | 1,200,000円 |
年間利回り | 2.40% |
この投資信託を単純に購入した場合の年間利回りは2.42%だったのに対し、ドルコスト平均法で購入した場合は2.4%と利回りはほぼ変わりません。
ボラティリティの高い方がいい結果となる
このように比較をすると、平均リターンが近い商品であってもドルコスト平均法を使って投資をするとボラティリティが高い商品へ投資をしたほうがリターンは良くなりました。
- 重要 必ずこのような結果になるわけではない!
- 投資信託の値動きによって結果は異なるので、必ずこうなるわけではありません。絶対ではなく、傾向があると思ってください。
理由は簡単です。低い時に多く買えるのがドルコスト平均法ですので、より低い値段になるのはボラティリティの高い商品となるので、安く多く買えた分結果が良くなります。
これをどう自分の運用に活かすべきでしょうか?
正解はこうです。
自分のリスク許容度が許す範囲で同じ利回り商品があれば、ドルコスト平均法で投資をする場合ボラティリティが高い商品を選ぶべき。
そうすることによってドルコスト平均法の特性、メリットを活用することでリターンをより高めることができます。
分散投資しないのも一つの手法
投資をする際にはリスクがついてきますので、そのリスクに合わせて商品を選んでいくのが長く投資を続けるコツです。
- リスク許容度についてはこの記事で解説しています
- 【注意!!】いきなり確定拠出年金の運用商品を選ぶあなたは危険!!
過去のデータを見ると世界株式に投資をした場合、リーマンショック時にはおおよそ6割くらいの損失が発生しました。 もし、あなたが一時的に6割以上の損失でも全然我慢できる人であれば、分散投資はせずにハイリスクハイリターンの商品1つだけを選びましょう。
長期投資の世界では分散投資が絶対と思われがちですが、そんなことはありません。
分散投資をなぜするのか再確認しよう
分散投資の目的はリスクを分散するというのが1番の目的です。”1つのカゴに卵を全て盛るな”という言葉の通りです。


次の目的は自分のリスク許容度に合わせてリスクとリターンを調整するためです。
株式はハイリスクハイリターン、債券はローリスクローリターンという特徴があります。当然あなたの望むリスクとリターンが株式や債券のリスクとリターンに合致するとは限りません。
あなたは4%のリターンが欲しい。でも株式は6%、債券は1%だとするとどちらか1つだけの資産ではあなたの望むリターンにはならないので、株式と債券を組み合わせて4%に調節してあげるわけです。
これも分散投資の目的です。
では、あなたがブラックコーヒーを飲めるのにわざわざミルクや砂糖を入れる必要はあるのでしょうか?
ないですよね。
ブラックコーヒーを飲める人はブラックコーヒーで飲むのがいいに決まっています。分散投資も一緒です。
分散投資をするということは、リスクを分散するということです。投資の世界ではリスクとリターンはセットですので、リスクを下げるということはリターンを下げるということです。
投資の世界ではリスクは”危険”ではなく”ブレ幅”を指します。つまり、ボラティリティです。
分散投資はボラティリティを下げる効果があるのです。
データで検証した通り、ドルコスト平均法を使っている場合ボラティリティの高い商品の方が利回りを高めることができます。
あなたがリスク許容度が高いのあれば、わざわざ分散投資をしてボラティリティを下げることなくボラティリティの高い商品だけを選び、ドルコスト平均法の特性を活用する方が利回りを高めることができます。
リスク許容度が許すなら海外株式や新興国株式が理想
ドルコスト平均法を利用して投資をしている代表的な制度は確定拠出年金やiDeCo(イデコ)です。来年から始まる積立型NISAもドルコスト平均法を利用する形になると思います。
確定拠出年金制度(iDeCo(イデコ)含む)で一番ハイリスクハイリターンな投資信託は『先進国株式』か『新興国株式』に投資をしている投資信託です。
つまり、あなたがリスク許容度の高い人だったら迷わず『先進国株式』100%のポートフォリオを作り、リスク許容度が下がるまで分散投資をすることなく1点投資する方が合理的、かつ効率的にお金を増やすことができます。
道具や手段は使い手次第
どれだけいいカメラを使っても素人が撮った写真より、プロのカメラマンがスマホで撮った写真の方がいいことがよくあります。
道具の能力というのは使い手が引き出すものであり、道具や手段をより良くするのと使い手がレベルアップするのは同じ効果があります。
つまり、あなたがスキルアップすれば今ある手段をよりよい手段へと変えることも可能なのです。
とはいえ、少しマニアックな内容で読むのに疲れたんではないでしょうか?でも、それはあなたに知識がついている証拠ですよ。
やはり投資をする上では知識があるとないのでは結果に違いが生まれます。知識がなくても投資はできますが、僕は少しでも投資における知識はつけるべきだと思ってます。
この記事で書いたことはドルコスト平均法を使うのであれば、より効率的に運用できる方法ですので、ドルコスト平均法を使っている人は覚えておいてくださいね。
動画でも解説しています