現在は役者時代に培った経験を生かし、講師業を中心に活動。200人以上の確定拠出年金の運用相談の実績がある。
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こんにちは、井上FP事務所の井上です。
先日、相談者の方から貯蓄性のある保険の解約のタイミングについて質問をいただきました。
確かに貯蓄性のある保険というのは解約のタイミングがわかりにくいですよね。
今回は貯蓄性のある保険の解約のタイミングについて考えていきましょう。
- 貯蓄型の保険を解約したい場合、損得の判断基準がわかるようになる
- 2つのケースで、どのような判断をすればいいか知ることができる
- 解約後、運用をする場合、どれくらいの利益がないと損をするかの損益分岐点がわかる
- 実際に存在する保険をサンプルに計算した結果の必要な利益がわかる
目次
途中解約のペナルティーのある保険が多い
終身保険や個人年金保険などは貯蓄性があり、特に終身保険などは利率の低さから途中解約をせず最後まで続けた場合の解約返戻金を増やしてあげるよという「低解約返戻金型」の終身保険が主流となっています。
このような途中解約の制限がある保険は、途中で解約すると損をした気持ちになります。
多くの人が貯蓄性のある保険は途中で解約すると損をすると思い込んでいますが、中には続けていても得にならない、むしろ損をする保険も存在します。
今回の相談者の方も自分が入っている貯蓄性のある保険は途中解約すると損をすると思い込んでいたので、見直しができないと思っていました。
では、自分の保険が途中解約しても損にならないかをどこで判断するのか?
それは「これまでに払った保険料」と「今返ってくるお金」です。
実際に判断してみよう
では、実際の数字を使いながら見ていきましょう。
Aさんは10年契約の貯蓄性のある保険に月々の保険料は1万円で入っていました。この保険は、終身保険などではなく様々な保障がついていて貯蓄もある保険です。
相談された時には加入して5年が経過していました。今の時点の解約返戻金を見てみると40万円です。
10年目の解約返戻金を見ると85万円です。
解約返戻金の金額を見ると、45万円の差です。ここだけ見ると10年目まで続ける方がいいように思えます。
しかし、払った保険料と一緒に比較すると結果は変わってきます。
今までの5年間で支払った保険料は60万円(1万円×5年×12ヶ月)です。
この払った保険料から解約返戻金を差し引くと掛け捨て部分の保険料がわかります。
5年目の掛け捨て部分の保険料は20万円(支払った保険料60万円ー解約返戻金40万円)です。
10年目の場合は、払った保険料は120万円(1万円×10年×12ヶ月)となります。解約返戻金は85万円ですので差額は35万円です。
ここまでを表にすると以下の通りです。
払った保険料 | 解約返戻金 | 差額(掛け捨て保険料) | |
5年 | 60万円 | 40万円 | 20万円 |
10年 | 120万円 | 85万円 | 35万円 |
5年と10年の差額 | 60万円 | 45万円 | 15万円 |
この表でみると10年目の方が掛け捨て保険料が15万円多くなることがわかりますね。
もし、この保険が必要ないのであれば、今解約しなければ15万円の保険料を無駄にすることになります。
見直しをする場合は、見直した保険の保険料が15万円以下であれば、効果があると言えます。
実際の相談者の方は、この保険は不要な保障だったので解約を薦めました。
待てば必ずプラスになる保険だとどうなるのか?
先ほどの例では貯蓄部分を含む保険で、貯蓄性能よりも掛け捨てになる金額が多いので単純でした。
では例えば払込満了後に必ずプラスになる終身保険などの場合はどうなるのでしょうか?
どんなイメージかというと
- 合計払う金額は300万円ですよ
- 30年後に払い終えて払い終えた時に解約したら320万円になりますよ
- でも途中解約すると払った金額の70%くらいしか返ってこないですよ
といった感じです。
この保険だとある時期まで待てば必ずプラスになります。
しかし保障が過剰だった場合、このまま貯蓄を目的とし続けるべきなのか、損をしてでも解約をしそのお金で運用をする方がいいのか判断の難しいところです。
では、実際に存在する商品の資料をもとに計算してみましょう。
今回計算対象にさせてもらう終身保険はオリックス生命のライズです。
ちなみにオリックス生命にはなんの恨みもありませんし、むしろ解約返戻金を丁寧に書いていて好感すら持ってます。
この商品ページのご契約例をもとに試算してみましょう。
引用元 オリックス生命のライズ
もし、あなたがこの保険に加入していて10年目に保障が過剰だと気づき見直しをしたいと考えたとしましょう。
この場合、10年目の払い込んだ保険料の合計は1,310,400円です。
それに対し解約返戻金は952,150円となり、返戻率は72.6%で損をする金額は358,250円です。
結構な金額を損している形となりますね。
しかし、30年間続けその後に解約すると3,931,200円の払い込みとなり、解約返戻金は4,355,900円で返戻率は110.8%で424,700円の得となります。
つまり10年目の時に解約すると約36万円の損、さらに30年続ける約43万円の得が生まれるということは解約しても、残り20年間で合計79万円以上の利益を出せる投資先が無ければ継続をする方が得策といえます。
どれだけの利益が出せれば辞めるべきか計算してみよう
では10年目で解約し解約返戻金約95万円と今後払う予定だった月々の保険料の約1.1万円を20年間運用すると想定しましょう。
この場合、運用利回りごとの利益は以下の通りとなります。
利回り | 利益 | 損益 |
1% | 49万円 | -30万円 |
1.5% | 76万円 | -3万円 |
2% | 106万円 | 27万円 |
2.5% | 138万円 | 59万円 |
3% | 172万円 | 93万円 |
3.5% | 210万円 | 131万円 |
4% | 250万円 | 171万円 |
4.5% | 293万円 | 214万円 |
計算に使用したサイト ファンドの海「積立と複利計算」
これを見ればわかるとおり、1.5%だと少しのマイナス、2%だとプラスになっています。損益分岐点は1.6%あたりですね。
つまり終身保険を単純に解約するだけなら、その後運用で1.6%の利益を出せるのであれば、解約するのも悪くないと思います。
しかし、保険はほぼ確実にお金が増えるのに対し、投資は不確定ですので途中解約しようと思える人は一握りではないかと思います。
ちなみに解約して500万円の死亡保障を定期保険などで用意しようとした場合、さらに損益分岐点は高くなります。
もし1500円程度の保険料の定期保険に加入し、その後の積立額が9500円(1.1万円ー1500円)だった場合、2.3%くらいが損益分岐点となります。
貯蓄性の保険は一度加入するとなかなか辞めにくい
今計算を見てもらったとおり、一度加入すると解約して投資で利益を出すという選択肢はなかなか難しいです。特に貯蓄型の保険を選択する人の多くは投資を苦手としているのでより難しく感じるでしょう。
ちなみに最初から終身保険ではなく、支払う予定の保険料である10920円のお金を30年間積立投資すれば、たった0.7%で約44万円の利益を出すことが可能となり、保険でお金を増やすより有利となります。
とはいえ、このページを読んでいるあなたはすでに貯蓄型の保険に加入していると思うので判断基準はこのように考えましょう。
- 続けることで貯まるお金よりかけ捨てる金額の方が多い場合
- 続けても損するだけです。保障が不要ならすぐに解約しても大丈夫
- 終身保険などの保障が不要だけど解約に悩んでいる場合
- 損益分岐点を調べて、それ以上の運用ができるなら解約。できないなら貯金と割り切って継続。計算は僕が計算したのと同じようにサイトに数字を入力するだけでOKです
まとめ:将来を見て判断する
これは投資にも言えることですが、過去を見ても何の判断の役に立ちません。もったいないとか、せっかく続けてきたのに・・・とか思うことは経済学的な観点からいうと無意味です。
これを経済学では「サンクコスト(埋没費用)」といい、嘆いても返ってこない費用を意味します。
ですので、判断する時には将来を見てどちらが自分にとって良い判断なのかを選択しましょう。
仮に良くない商品を利用していたのであれば、この事実は反省材料として生かすとして、これからの保険料をどう使うことが一番いいことなのかを軸に考えることが見直しの基準です。
あなたが加入している保険を解約をするべきか悩んでいたら、このようにチェックしてみてくださいね。