- 商品選びより資産選びの大切さがわかる
- 各資産ごとの特徴がわかる
- 資産を組み合わせ例を見ることによりリスクとリターンの変化を見ることができる
- 運用の効率性を知るシャープレシオについて学ぶことができる
- 3つの資産配分例を見ることができる
こんにちは、井上FP事務所の井上です。
確定拠出年金の運用で、どのように資産を組み合わせるかを悩んでいませんか?
今日は確定拠出年金の資産の組み合わせをどのように行うのかを一緒に考えていきましょう。
では、さっそく資産の組み合わせを考えていきましょう。
目次
資産選びは、商品選びよりも大切なこと
順番を間違えてはいけない
では、一旦ここまでのおさらいをしておきましょう。
確定拠出年金の運用を始めるときは、まず自分のリスク許容度を知ることが大切でした。
そして、そのリスク許容度に合わせて投資するものを選んでいくのですが、分散投資することでリスクを抑えてリターンを高めることができるんでしたね。
そして、今日は次のステップに行きます。
あっ、もしかして、「やっと商品選びか!!」と思ってませんか?
残念ながら、まだ商品は選ばないんです。
もっと言うと、これからすることは商品を選ぶよりも何十倍も大切なことです。
例えば、車にまったく詳しくない人が車を選ぶときにいきなりから車種(プリウスとかフィットとか)を選べますか?
無理ですよね。
多分、使用目的から始まって大きさとか燃費とかを考えてから、最終的に車種を選ぶはずです。
投資も同じです。
あなたが投資について詳しくないのなら、いきなり商品から選ばないはずです。
ところが、多くの人がいきなり車で言うところの車種である投資信託を選んでしまうのです。
だから失敗してしまうわけです。
なので、今からするのはどの資産に投資するのかを考えます。
資産を分類してみよう
資産とは、日本株式、海外株式、債券、不動産、コモディティ(商品)、金・・・などたくさんあります。
企業の確定拠出年金の場合、企業が選出した投資信託が10〜20個くらいありますが、それらを資産に分類すると、ほとんどの企業は以下の5つの資産に分類されます。
- 元本確保型
- 日本債券
- 海外債券
- 日本株式
- 海外株式
元本確保型
その名の通り、元本を確保しているリスクの低い商品です。
具体的には、定期預金とか生命保険、損害保険です。
20商品ほどラインナップされていたら、そのうち5〜10個くらいは元本確保型を用意している会社が多いです。
日本債券
次は、日本債券です。
その名の通り、日本の債券ですが、債券とはなんでしょうか?
債券とは、借用書です。
具体的に説明しましょう。
僕があなたに10年間お金を貸してくださいと言いました。
あなたは、渋々貸してあげることにし、利息もしっかりともらう約束をして僕にお金を貸しました。
僕はお金を借りた代わりに借用書を発行して、その借用書をあなたが持っている限り決まった時期に利息も払いますし、時期がくれば借りたお金を全部返します。
これって、一般的なお金の貸し借りの流れですよね。
これを僕が日本という国に変わったと思ってください。
借用書が債券です。
この債券だけをたくさん入れて、運用しているのが日本債券のファンドです。
- ファンドとは?
- みんなのお金を預かって、代わりに運用してくれているところ。投資信託と同じだと思ってもらって大丈夫です
こう考えると、元本の安全性は約束されていないですが、お金が返ってこないのは日本がつぶれた時だと考えるとそれほどリスクが高くはないですね。
実際は、債券にも2年とかの短いものもあれば30年とか長いものもあって、投資信託の中にたくさん入っていますが、そのあたりの細かいところは気になった時に勉強してください。
海外債券
こっちは、海外の債券を詰め込んだファンドです。
海外と一言に言っても世界は広いですから、一括りにできません。
一般的に投資の世界では、海外は「先進国」と「新興国」の2つに分類されます。
そして『海外債券』と言われるのは先進国を指していることが多いです。
会社の商品一覧に海外債券型が1つしかなければ、おそらくそれは先進国の債券を対象にした投資信託です。
では、「先進国」と「新興国」は、どう違うのでしょうか?
これは、あなたが抱くイメージ通りだと思います。
あなたは「先進国」と「新興国」にどんなイメージを持ってますか?
「先進国(例えば、アメリカ、フランスなど)」は比較的安全で国が潰れる(デフォルトする)ことはない、「新興国(南アフリカとかブラジルなど)」は国が潰れる可能性がありそうだな・・・みたいな印象はないですか?
ちなみに、僕は先進国は「成熟した大人」、新興国は「成長著しい中学生くらいの子」、そんなイメージを持っています。
先進国はアメリカとかドイツ、フランスなどです。
経済破綻もしなさそうだし、かといって爆発的な成長もない、安定した国々です。
反対に新興国というと、ブラジル、南アフリカ、インド、ロシアとかです。
ブラジルは政治も不安定ですし、安定しているとは言いにくいですが、成長する時は爆発的に成長しそうですよね。
僕が中学生と例えたのも、いい指導者がいればいい方向にまっすぐに成長しますが、悪い友達ができると非行に走る、といった不安定なイメージからです。
債券の利率とは信用度などで決められているので、先進国よりも新興国の方が高い傾向があります。
日本株式
これは文字どおり、日本の株式会社に投資をしているファンドなどですね。
みんなが知ってるトヨタとかソフトバンクとかユニクロ(ファーストリテイリング)などに投資をしているファンドなので、基本的には説明はなくてもなんとなくイメージで理解できると思います。
海外株式
こちらは海外の株式に投資をしています。
債券と同様、「先進国」と「新興国」の2つがありますが、一般的に海外株式は先進国の株式を指します。
ラインナップに海外株式と名前がついた商品が1つしかない場合は、おそらくそれは海外の先進国の株式に投資をするファンドだと思います。
ファンドによって投資先は少し変わるのですが、例えば有名な海外の先進国に投資しているファンドの中身を少し見てみると、こんな感じです。
順位 | 上位10銘柄 | 比率 |
---|---|---|
1 | アップル | 2.10% |
2 | マイクロソフト | 1.40% |
3 | エクソンモービル | 1.10% |
4 | GE(ゼネラル・エレクトリック) | 1.00% |
5 | ジョンソン・エンド・ジョンソン | 1.00% |
6 | アマゾン・ドット・コム | 0.90% |
7 | ウェルズ・ファーゴ・アンド・カンパニー | 0.90% |
8 | JPモルガン・チェース・アンド・カンパニ... | 0.80% |
9 | ネスレ | 0.80% |
10 | アルファベット(C) | 0.80% |
参照元 <購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド 組み入れ上位(H28.7.31時点)
見ていて、どうですか?
結構知っている会社が多いですよね。
海外の会社に投資をすると言われると遠い会社に投資をするように感じますが、中身を見ていると知っている会社が多いということがわかります。
このような企業に投資をしているのが(先進国の)海外株式に投資をするファンドです。
REITがある企業もある
基本的には、多くの企業が上で説明した5つの資産に分類できますが、たまにREITがある企業もあるので簡単に説明します。
REITとは不動産の投資信託です。
株式の投資信託があるように不動産にも投資信託があるんですね。
株式も投資するのに数十万円も必要なのと同じように不動産に投資しようとすると数千万円必要ですが、投資信託にすることで1000円くらいから投資することができるというわけですね。
資産を組み合わせてみよう!!
代表的な資産の種類がわかったところで、実際に自分のリスク許容度に合わせて資産を組み合わせていきましょう。
前回の分散投資は魔法の方程式。確定拠出年金で運用するなら絶対使おう!でお伝えしましたが、運用をするときには分散投資が大切でしたね。
そして、ただ分散するだけではなくて相関性を考えて分散しないといけなかったんですよね。
それを踏まえて、各資産の「期待リターン」と「想定リスク」と「相関係数」を見てみましょう。
今回、参考にするのは KKR(国家公務員共済組合連合会)の「基本ポートフォリオの見直しについて 附属資料(H25.10.18)」です。
期待リターンと想定リスク
期待リターン | 想定リスク | |
日本債券 | 1.0% | 2.0% |
海外債券 | 1.8% | 10.0% |
日本株式 | 4.2% | 18.0% |
海外株式 | 5.0% | 20.0% |
相関係数
日本債券 | 海外債券 | 日本株式 | 海外株式 | |
日本債券 | 1 | |||
海外債券 | -0.025 | 1 | ||
日本株式 | 0.199 | -0.063 | 1 | |
海外株式 | 0.001 | 0.057 | 0.494 | 1 |
相関係数の説明も念のため、書いておきますね。
- 相関係数が1に近い
- 比較している2つは同じような動きをする
- 相関係数がー1に近い
- 比較している2つは反対の動きをする
- 相関係数が0
- 比較している2つはまったく関係性のない動きをする
各資産の相関係数を見ると、なんとなく株式と債券が相関性が低いことがわかります。
日本債券と海外債券も相関係数は低いですが、逆に日本株式と海外株式は相関係数が0.494と1に近いので同じような動きをすることがわかりますね。
では、実際に分散投資をした時のリスクとリターンの関係を見てみましょう。
日本株式に100%投資をした時の期待リターンは4.2%で想定リスクは18%です。
資産 | 比率 | |
日本債券 | 0.00% | |
海外債券 | 0.00% | |
日本株式 | 100.00% | |
海外株式 | 0.00% |
期待リターン | 4.20% | |
想定リスク | 18.00% |
これを分散投資をすることによって、リターンは下げずにリスクだけを高めることができます。
日本株式を70%にして海外株式を30%にした場合の期待リターンは4.44%になります。
そして、想定リスクは16.42%となりました。
資産 | 比率 | |
日本債券 | 0.00% | |
海外債券 | 0.00% | |
日本株式 | 70.00% | |
海外株式 | 30.00% |
期待リターン | 4.44% | |
想定リスク | 16.42% |
このように組み合わせによって、リスクとリターンは変化していきます。
シャープレシオで効率性を測る
自分で組み合わせてリターンとリスクを調べていくと、リスクによってリターンも変わるので、どっちのほうが優れた組み合わせなのかがわからなくなってきます。
そんな時は、シャープレシオで比べることができます。
シャープレシオとは、単純にリターンをリスクで割った数字です。
簡単に言うと、リスクに対してどれだけのリターンを得られたかを知ることができます。
では、さきほどの2つの組み合わせを使いながら、シャープレシオの説明をします。
日本株式100%の場合は期待リターンが4.2%、想定リスクが18%なのでシャープレシオは0.23(4.2%÷18%)となります。
次に、日本株式70% 海外株式30%の場合の期待リターンが4.44%、想定リスクが16.42%なのでシャープレシオは0.27(4.44%÷16.42%)となります。
日本株式100% | 日本株式70% 海外株式30% | |||
期待リターン | 4.2% | 4.44% | ||
想定リスク | 18% | 16.42% | ||
シャープレシオ | 0.23 | 0.27 |
まず、この二つを比較するとシャープレシオうんぬんの前に、『日本株式70% 海外株式30%』の方がリスクが低く、リターンが高くなっているので効率的な組み合わせだとわかりますよね。
それを示すように、シャープレシオも『日本株式70% 海外株式30%』の方が数字が大きくなっています。
このように効率的な運用をしているとシャープレシオの数字は大きくなります。
シャープレシオも比較する際に便利な指標ですので、参考にしてください。
何を使って計算すればいいの?
あとは自分のリスク許容度に応じて自分だけの組み合わせを作り上げていくだけです。
計算方法ですが、僕は自分でエクセルシートを使って計算していますが、あなたの場合はそんなめんどくさいことをする必要はありません。
だって、確定拠出年金を管理しているところがシミュレーションツールを用意してくれているからです。
※あなたのIDとパスワードでログインできるサイトです。
代表的なツールでいうと
- 質問形式でリスク許容度に合ったポートフォリオ作成
- ポートフォリオによる期待リターンと想定リスクの試算
などがあります。
あなたは、それを利用したほうがいいと思います。
もちろん、ネット上にも分散投資をした場合の効果などを計算できるツールを用意してくれているサイトもあります。
例えば、ファンドの海さんの『長期投資予想/アセットアロケーション分析』なんかいいんじゃないでしょうか?
どちらを使ってもいいので、まずは自分で試してみてください。
そして、いくら時間がかかってもいいので、納得のいく組み合わせを作り上げてください。
では、最後に組み合わせ例をいくつか紹介しておきましょう。
アセットアロケーションの例
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)
まずは、僕たちの年金を運用しているGPIFのアセットアロケーションです。
よく何兆円のマイナスとかニュースでやっているので、投資に興味ない人も知っていると思います。
資産 | 比率 | |
日本債券 | 35.00% | |
海外債券 | 15.00% | |
日本株式 | 25.00% | |
海外株式 | 25.00% |
期待リターン | 2.92% | |
想定リスク | 8.45% | |
シャープレシオ | 0.34 |
リスク資産である株式の比率が全体の50%となっており、2001年からの運用実績は業務概況書[PDF:14,946KB]によると2.6%となっています。
セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド風
次は直販投信会社のセゾン投信の人気商品であるセゾン・バンガード・グローバルバランスファンドに似せた一例です。
セゾン投信の商品は、新興国などにも分散をしているので、単純に同じようにできないので、似せて作ったバランスです。
資産 | 比率 | |
日本債券 | 8.6% | |
海外債券 | 41.4% | |
日本株式 | 4.1% | |
海外株式 | 45.9% |
期待リターン | 3.3% | |
想定リスク | 10.61% | |
シャープレシオ | 0.31 |
まとめ
かなり長い文章になりましたが、この資産の組み合わせをしっかり考えることがとても大切です。
実は、国内外の研究で運用の結果はアセットアロケーションで9割決まると言われています。
つまり、どの投資信託を選ぶのかよりもどの資産に投資をするのかが非常に大切だということです。
ここまでしっかりとできたら確定拠出年金の運用の大切なことは、もう終わったようなもんです。
次回は投資商品の選び方についてお話ししますね。
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