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こんにちは、井上FP事務所の井上です。
確定拠出年金の運用を始めた後、どのタイミングで何をすればいいかわからずに困ってませんか?
この記事では、こんなことがわかるようになります。
- 運用を始めたら、どれくらいの頻度でチェックするべきかがわかる
- チェックをする目的、理由がわかる
- チェックの際のスイッチングとリバンスについて理解できる
- リバランスをしないとどうなるのかが理解できる
- スイッチングの注意点がわかる
では、さっそく運用を始めた後にしないといけないことを見ていきましょう。
目次
運用を始めたら1年に1回のチェック
確定拠出年金の運用は、入社してから退職まで続けることになるので、22歳入社なら38年間も運用をしていくことになります。
38年間運用していくって、かなり長期にわたって運用をしていきますよね?
このように長期で運用をしていくのであれば、やはり長期的な目線を持っておかないといけません。
子育てをする時に、子供の今も大切ですが、将来どんな子になって欲しいとか将来のことも考えますよね?
お金も言ったら自分の子供みたいなもんです。
だから、自分の子供であるお金を育てる確定拠出年金は長い目で見ておく必要があります。
じゃあ、どれくらいの頻度でチェックするべきなんでしょうか?
僕は1年に1回のチェックだけでいいと思ってます。
もちろん、3ヶ月に1回とか6ヶ月に1回とかを勧める人もいますが、僕はいろんな理由があって1年に1回のチェックをオススメしています。
1年に1回のチェックを勧める理由
自分の期待リターンと想定リスクを考えたポートフォリオを作っているから
ここまでシリーズで読んでもらった人は、しっかりと自分のリスク許容度に合わせてポートフォリオ(投資信託の組み合わせ)を作っていると思うんです。
しっかりとリスク許容度に合わせたということは、金融危機のような経済不安が起きて株価などが下がったことまで想定したポートフォリオになっているはずです。
自分が耐えられるリスク内で運用をしているので、最悪の状態を想定しても1年間にどれくらいお金が減るかは想定内の可能性が高いんですね。
だから、株式相場が上昇しようと下落しようともあまり気にせずにほったらしにしていてもいいと思います。
下がっていく相場を見ると不安になる
こまめにチェックしてると日々の値動きがわかるので、なぜ上がったのか?なぜ下がったのか?に興味が持てるので、それはそれでいいことなんですが、その値動きが精神的に辛くなることがあります。
例えば、2011年のアベノミクス相場のようにうなぎのぼりで株価が上昇した年はこまめにチェックしたら、毎回自分の資産額が増えているので気持ち良くて仕方ありません。
でも、反対に2016年前半のように下がり続ける相場になれば、チェックするたびに自分の資産額が減っていくのを見るのは精神的にかなり辛いです。
下がり続ける相場を見るのがなぜ辛いのかというと、どこまで下がるかわからないからです。
海とか川でも底が見えているところは怖くないですけど、底が見えないところってどれだけ深いのかわからないから怖くないですか?
人は自分のわからないことや把握できないことに不安を感じる部分がありますが、株式投資などは基本的にどこまで上がるか下がるかはわからないものです。
だから、下げ続ける相場はリスク許容度を考えて投資していても不安になります。
でも、しっかりとリスク許容度に合わせてポートフォリオを作ったのなら、ほぼ自分の想定内の値動きの範囲で収まるので精神的に耐えられないのであれば、僕は1年間まったくチェックしなくてもいいと思っています。
なぜチェックが必要なのか?
僕は1年に1回のチェックをオススメしますが、あなたが「いや、半年に1回がいい」と思うなら半年に1回でも構いません。
大切なことは、一番最初に決めたポートフォリオのバランスを守りながら運用することです。
最初に決めたポートフォリオは、あなたのリスク許容度などから考え抜いたあなたの運用方針みたいなものです。
運用方針は、そう簡単に変えるもんではありません。
子供の教育方針をポンポン変えていたら、どの方針が正しかったのか判断することができないのと一緒で、運用方針もある程度続けてみないと結果がわからないですから、こまめにチェックした結果、不安になるのなら1年に1回の最低限のチェックでいいです。
また、いつチェックしたらいいのかと迷うかもしれませんが、正直いつでもいいと思います。
お正月の少し暇な時にチェックしてもいいですし、確定拠出年金は1年に1回ハガキで運用報告書みたいなのが届くので、そのタイミングで見直してもいいと思います。
自分が時間を取れるタイミングを1年に1回作れればいいだけです。
時間と言っても、1時間もいりませんから、好きなタイミングにしましょう。
では、なぜ定期的なチェックが必要なんでしょうか?
当初のポートフォリオとバランスが変わっているから
1年間運用していると、増えた資産もあれば減った資産も出てきます。
するとどうなるかというと一番最初に決めたポートフォリオと違うポートフォリオになっている可能性があります。
さっきも言った通り、確定拠出年金の運用で大切なことは決めたポートフォリオのバランスを守りながら運用することです。
言葉だけでは分かりにくいので、図も交えて説明していきましょう。
例えば一番最初に決めたポートフォリオがこんなのだったとしましょう。

当初のポートフォリオ
当初の資産割合と期待リターンと想定リスク、シャープレシオは、以下の通りです。
資産 | 比率 | |
日本債券 | 20.00% | |
海外債券 | 20.00% | |
日本株式 | 30.00% | |
海外株式 | 30.00% |
期待リターン | 3.32% | |
想定リスク | 10.11% | |
シャープレシオ | 0.33 |
この割合で運用を始めて1年後にチェックした結果、こんなポートフォリオになってました。

1年後のポートフォリオ
1年度の資産割合と期待リターンと想定リスク、シャープレシオは、以下の通りです。
資産 | 比率 | |
日本債券 | 15.00% | |
海外債券 | 10.00% | |
日本株式 | 40.00% | |
海外株式 | 35.00% |
期待リターン | 3.76% | |
想定リスク | 12.35% | |
シャープレシオ | 0.30 |
このポートフォリオの変化は、日本株式、海外株式の割合が多くなっているので、この1年間は株式が好調だったということがわかりますね。
資産 | 当初の比率 | 1年後の比率 | 変化した割合 | |
日本債券 | 20.00% | 15.00% | -5.00% | |
海外債券 | 20.00% | 10.00% | -10.00% | |
日本株式 | 30.00% | 40.00% | +10% | |
海外株式 | 30.00% | 35.00% | +5% |
自分の資産が増えることは非常に嬉しいことですが、注意しないといけないのは1年後のポートフォリオの想定リスクです。
当初の比率 | 1年後の比率 | 変化した割合 | ||
期待リターン | 3.32% | 3.76% | +0.44% | |
想定リスク | 10.11% | 12.35% | +2.24% | |
シャープレシオ | 0.33 | 0.30 | -0.03 |
株式の比率が多くなるということは、期待リターンと想定リスクも高くなります。
想定リスクが高くなるということは、自分のリスク許容度を超えたポートフォリオになってしまっている可能性があるので、元どおりにしてあげないといけないですよね。
このときに金融危機が起こってしまったら、自分の耐えられないくらいの資産減少が起こってしまうかもしれないからです。
ですので、下の図のように資産総額が増えたとしても、当初の割合に戻してあげないといけません。

もとどおりの割合に戻すことが大切
このようにバランスを変えることを『リバランス』と言います。
なんのために定期的なチェックをするのかというと、リバランスをするためだけです。
確定拠出年金の運用は、自分の運用方針をしっかりと考えたら、あとは1年に1回リバランスをしてあげるだけなんです。
超簡単ですよね。
あと、すごく大切なことですが、リバランスは利益が出ていようと損失が出ていようと基本的に絶対に行わないとダメです。
資産運用というのは最大の敵って、なんだと思います?
最大の敵は自分自身です。
特に自分の欲に負けないことが大切です。
上げ相場でリバランスをしなかった人たち
あれは2015年の春の出来事でした。
その時期は、とある企業の従業員の方向けに何十人の確定拠出年金の相談を受けていました。
その企業は確定拠出年金の1年に1回のハガキが春頃に届くので、みんな気になっている時期だったんですね。
確定拠出年金はお金を運用している制度なので、おおやけに同僚同士で話をする話題でもないのですが、さすがにその時期は確定拠出年金の話をみんなしていました。
なぜかというと、みんな利益が出ていたからです。
2014年の4月頃は日経平均が15000円くらいでしたが、1年後の2015年の4月頃は日経平均が20000円くらいだったので、株式に投資している人はだいたい利益が出ていたんですね。
また日経平均が20000円を超えたこともあり、普段投資しない人も株式投資に興味を持ち出していました。
(普段投資をしない人にまで投資の話が回ってくるということは、多くの人がいい思いをした後だということなんですが・・・)
そんな時に僕に相談してきた人は、リスク許容度があまり高くなく、株式の比率はできるだけ抑えないといけませんでした。
しかし、その人はもっと利益を出したいと言って株式の比率を高くしたがりました。
人間は欲深い生き物で損はしたくないけど儲けたいんです。
周りの人が儲かっているのに自分だけ儲かっていないのは面白くないわけです。
僕は反対をしましたが、その方は僕の反対を押し切り株式を多く入れたポートフォリオにされました。
その後、株式相場はギリシャの国民投票、チャイナショック、ブレグジットとマイナスな出来事が多く、日経平均もズルズル下げていき、2016年の4月頃の日経平均は16000円くらいでした。
言い方は悪いですが、一番損をしてしまう方の典型的なケースです。
他人が利益を出していようと、気にすることはありません。
あくまでも自分のリスク許容度にあったポートフォリオを作ることが大切です。
欲を出しすぎることは、人生においていい結末にならないことが多いですが、投資において欲を出しすぎることはタブーです。
1年に1回のチェックの時に株価が上昇していたとしても、そこは感情を出さずに機械的にリバランスをしてください。
それが長期で運用していく上では非常に大切です。
どうやって変更するのか?
確定拠出年金で運用している商品を変更しようと思った時には2種類変更することができます。
- 毎月購入する商品(これから買う商品)
- 運用している商品(すでに購入した商品)
確定拠出年金は、毎月決まったタイミングで指定した商品を購入しているので、その購入する商品を変更することができます。
これを『配分変更』なんて言います。
これから購入していく配分を変更するから配分変更と言うんですね。
もう一つは、すでに購入して運用している自分の資産の割合を変更することができます。
これを『スイッチング』なんて言います。
投資の世界では、ややこしいカタカナの専門用語が多くて嫌になりますが、スイッチとは「他のものに切り替える」という意味があるので、スイッチングと言うんでしょうね。
リバランスをするときは、2番の運用している商品を変更するスイッチングでしてください。
確定拠出年金は売却した時の税金がかかりませんので、利益が出ていようとも関係ないので、チェックした時にバランスが変わっていたら、スイッチングで変更してください。
ちなみに、確定拠出年金以外で長期分散投資をしている人は、リバンラスする時には毎月購入する配分を変更してリバランスをしていたりします。
これは税金を課税されないためのテクニックですね。
でも、確定拠出年金は非課税なのでそんなことせずにズバッとリバランスしてあげましょう。
スイッチングの注意点
確定拠出年金のリスク商品は投資信託です。
投資信託にはコストが必要となりますが、そのコストは大きく分けると3つあります。
- 買うとき(販売手数料)
- 運用しているとき(信託報酬)
- 売るとき(信託財産留保額)
買うときに必要な手数料は、確定拠出年金ではおそらく存在しないと思います。
今までいろんな企業の確定拠出年金の商品ラインナップを見ましたが、一度も見たことありません。
運用しているときにコストは必要ですが、確定拠出年金は一般的な投資信託より低いのが特徴ですね。
最後に、売るときに必要なコストの信託財産留保額は確定拠出年金の商品の中にも一部の商品に存在しています。
自分が運用している商品に『信託財産留保額』が必要なのかをチェックしてみてください。
例えば、信託財産留保額が0.3%と書かれていたらどれくらいかかるかというと・・・
信託財産留保額が必要な商品で100万円運用していたら、解約するときに3000円(100万円×0.3%)必要だということです。
信託財産留保額はないに越したことはありませんが、どうしても運用したい資産に当てはめる投資信託がそれしかないのであれば仕方ありませんが、少し気にしておいてもいいと思います。
まとめ
ここまで読んでもらえたら、あなたもなぜ定期的なチェックが必要でどういう風に変更ができるかも理解できたはずです。
変更方法のスイッチングなどは企業によって違いますが、多くの会社が月に何回までと決めています。
確定拠出年金は長期で運用していくので、制度的にも月に何回も変更せずにドシっと構えておけと言っているかのような作りとなってます。
運用を始めたら、あまり確定拠出年金のことは気にせず1年に1回思い出したようにチェックをしておけば大丈夫です。
チェックしすぎる人よりチェックをあまりしない人のほうがいい結果となるという研究結果もありますので、ドシっと構えておきましょう。
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